思わず経歴をぐぐりたくなる小説家、村田沙耶香さん…
この度読んだのは「タダイマトビラ」で、以前「コンビニ人間」と「しろいろの街の、その骨の体温の」を読んだことがあったのですが、どれも圧倒的な世界観
村田さんの小説の文章力と物語性ってとてつもないです。
たとえば羅生門や河童を読むと、後味に少々の気色悪さが残ると思うのですが、村田さんの小説読了後はそんな気分になります。
すこし性的な気持ち悪さもあります。
ただ、村上春樹方向のそれとは違って、性への反発要素もあるイメージ
タダイマトビラのトビラはこの世界に生を受けたときに通った母の足の間にあるトビラのことを指すようです。
両親(特には母)の性質により家族がうまく機能していないと感じる方にとっては救いになるフレーズもありそう。
エンディングに関して、あの結末から希望を見いだせるかどうかは読む人に相当左右されそう。
重要な登場人物の渚さんや瑞希は令和の女の子の価値観というか、「潔癖」や「自立」が軸にある。
若いうちから「自立」を目指して励む2人は恐らく大正解ではあるんだけど、主人公の恵奈とは違った歪みがある感じ。
勉強を面倒くさがる子が登場しない不健全さ、というか
わたしは悪役のように描かれる主人公の母親を悪い人にはまったく思わなかった。
むしろ苦手なりにちゃんと母業をこなす彼女に、たまにだけ帰ってきて「もっと母親らしくしろ」とかのたまう父親に嫌悪感を覚えます。
これ、文章のリードの通り、「この母親はないわぁ」「こども可哀想だわぁ」と感じる方もいるのかなぁ
家庭に期待していない主人公の恵奈と、家族に期待してシナリオ通りにぐれる弟の意見のぶつかり合いのシーンは恵奈の意見に100%賛同しながら読み進めました。
ないものねだりの弟くん。
彼は「ふつうの」家族へのあこがれが強いなぁ
小説の中での設定ではまだ思春期だから仕方ないとはいえ、個人的には恵奈のようにさっさと諦めるほうが健全に感じました。
弟くんが大人になって気づけるかわからないけれど、結局「ふつうの」家族なんて思っているほどはありふれていない。
この家庭が壊れているのは母親のせいだけではなく、家族ひとりひとりの性格、考え方、捉え方、その相性の悪さに尽きると思う。
家族の話と思ったけど、最終的にSFだったのかな みたいな 大変興味深いお話でした。
コメント